テレビで紹介された日本視覚障害囲碁普及会
平成24年5月6日

囲碁を楽しむ一人の視覚障害者の紹介

山梨県甲府市で鍼灸医院を営む長澤誠さん(68歳)。
治療は週一回、患者の多くは、おなじみさんで、長澤さんの丁寧な治療とその人柄で慕われています。
長澤さんの仕事の合間の楽しみが視覚障害囲碁です。
これが視覚障害者用に開発された碁盤と碁石です。
丸くくぼんでいる所に碁石を置きます。埋め込み式なので、碁石の場所を手で触って確認できます。触っても碁石がずれないような仕組みになっています。
碁石にも工夫がされています。黒石の表面には凹凸のある円が描かれています。白石の表面は平らのままです。表面に触ることで、黒、白の区別ができます。
碁石には磁石が入っているので、鉄板製の碁盤に吸着されます。
視覚障害者同士でも対局できます。対局に際し、一手打つごとに自分がどこに打ったかを相手に知らせます。相手も手で確認しながら、進行します。、
一局打つのに時間が掛かりますが、囲碁を通じた仲間との触れ合いが長澤さんの生活に潤いをもたらしています。
長澤さんが囲碁を始めたのは、小学5年生のとき、友達から教えてもらったのがきっかけでした。グングン棋力を上げ大人にも負けない力を付けました。「夏休み、冬休みは勉強より囲碁をした方が多かった・・・。」
その長澤さんに大きな転機が訪れました。中学2年生のとき、病いの影響で眼に障害を持ったのです。
「眼が見えなくて、囲碁ができず淋しい思いをしました。」 「これから大人になってどうなるのか、将来への不安が大きかった・・・。」
失意と不安の中、長澤さんを支えたのは家族や友人でした。
中学3年生から、回りの勧めで盲学校に進学。当時は囲碁ができる環境になかったので、音楽活動を楽しむようになりました。
長澤さんの担当はトランペット。友人と演奏ができる一体感で充実していました。
ただ、見えなくなっても、長澤さんの頭の中にはいつも碁盤が写っていました。「ときどき頭の中で囲碁を打っていました・・・。」
中学校を卒業後、鍼灸師の資格を取り、地元の病院に就職しました。26歳で結婚、奥様の邦子さんは、心身両面で長澤さんの支えになりました。趣味の旅行やコンサートなど奥様を通じて知る外の世界は、掛け替えのない体験でした。
そんなある日、ラジオから思いもかけない情報が飛び込んできました。視覚障害者用の碁盤があるというのです。「これはいい。もしかしたら、囲碁ができるかも知れない。興奮して嬉しくなりました。」
囲碁を諦めてから、およそ40年。念願の碁盤を手にした長澤さんは、付属の説明書やテキストを片手に久し振りに囲碁と触れ合いました。しかし一つ悩みがありました。それは、対局しようにも相手がいないことでした。
そこで相談を持ちかけたのが以前からお世話になっている地元の福祉施設「山梨ライトハウス」でした。
ここへ来る視覚障害の人たちの趣味活動に囲碁を加えてもらえないか提案したのです。
ライトハウスの花形幹雄さん。それまで囲碁を知らなかったのが、いざ始めてみると囲碁の魅力に取り付かれてしまいました。早速、囲碁交流会を立ち上げました。最初はわずか数人の参加者でしたが、相手ができたことは長澤さんには喜びでした。
小学生のころ、味わった囲碁の楽しさを思い返すからです。その後は、自分と同じ楽しみを味わってほしいと声を掛け、メンバーを増やしていきました。今では月に一度、集まって囲碁を楽しんでいます。
「大変楽しいですね。交流会は囲碁も熱心にやりますが、友達の情報を耳にしたりと大変有益な集まりです。最後に長澤さんのもう一つの趣味の川柳。
「思案して決めた一手に花が咲き」
人生にも逆転があると思いながら、作った句です・・・。
視覚障害者用の碁盤と碁石は、研究に研究を重ねて作られました。碁石はくぼみにピタッとはまり、ずれて動くことはありません(ズルができない!)。囲碁を打ちたいという思いから出来上がったものです。
日本視覚障害囲碁普及会では、盲学校や福祉施設に無償で碁盤と碁石を提供しています。会員数は全国に250名。大阪で毎年11月に、約100名が参加して囲碁大会を開催しています。電話による対局も実施しています。
日本視覚障害囲碁普及会
事務局
電話06-6318-6278
視覚障害者への囲碁の指導に興味のある方も募集しています。
日本視覚障害囲碁普及会への問合せ先:06−6318−6278

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